インバスケット演習の攻略とコツ
「なかなかインバスケットが攻略できない、点数が上がらない・・・」多くの方がそのような状況でこのページをご覧になっていると思います。
または、「正解が分からない、対策として何をして良いのか分からない」といった感じでしょうか。
このような方々に対しては、”まず、インバスケット演習とは何かを知る”ことをオススメしています。
よくわからない・・・というのは、インバスケット演習が形作られてきた経緯や人材アセスメントそのものの考え方に馴染みがあまり無いというのが大きな原因です。
そういった根本的な部分をすっ飛ばして、いわゆる「インバスケットのコツ」のようなテクニック論に飛びつくことで、「何が何だかよく分からなくなった」という状況が生まれてきます。
予め言っておきますが、テクニック論はあります。
1点くらいは上がるコツはあります。当落ライン上にいる方であれば、簡単なコツ1つで合格する可能性もあるでしょう。
また、もともと対策などをしなくても合格できる方もおられます。できる方が一定数存在するというのは、皮膚感覚で理解できるのではないでしょうか。
そういった方であれば、コツを知らなくても合格しますし、コツを知っていればなおさらです。
そして、コツを知ったところで点数が合格ラインに達しない方もいます。
人材アセスメントの合格率は一般的に3割と言われていることから、少なくても5割程度の方は、テクニック論では合格しない可能性があると言えるかもしれません。
「試験まで時間がない・・」と急く気持ちも分かりますが、大幅に点数を伸ばしたいのであれば、テクニックやコツよりもまずはインバスケット演習や人材アセスメントの本質的な部分を勉強してみて下さい。
人材アセスメントは将校選抜試験から生まれた
インバスケット演習は人材アセスメントと呼ばれる管理職選抜プログラムの一部です。
ですから、インバスケット演習のことを理解するためには、そもそも人材アセスメントとは何か?ということを紐解くことが必要となってきます。
人材アセスメントは元々陸軍の将校選抜試験として使用されたプログラムです。
この将校選抜試験では、戦時下の生と死の間の極限状態の中でリーダーシップを発揮し任務を遂行できる人材を選抜するのが目的です。
ですから、プログラムは、実戦に近ければ近いほど良いわけです。
つまり、机上論ではなく、実戦のシミュレーションを通じて、候補者の能力を評価していくということになります。
頭でっかちよりも、実戦で成果を出せるやつを昇進させようということです。
この考え方というのは、民間企業の選抜試験として使われるようになった今でも変わりません。
人材アセスメントでは、候補者に管理職の仕事をシミュレートした演習を課し、尚且つ大きなストレスを与えることで、候補者の素の行動を表出させようとします。
グループ討議演習や面接演習などはまさにそうですね。
そしてこれは、一見ペーパーテストに見えるインバスケット演習においても同じです。
多くの方は、インバスケット演習をペーパーテストだと思っているようですが、それは間違いです。
インバスケット演習は、未決箱(インバスケット)から既決箱(アウトバスケット)に決裁した書類を入れていく、という管理職の仕事のシュミレーションです。
ペーパーテストでは、求められる答えがあります。インバスケット演習には答えはありません。
これは私達の仮説ですが、多くの方がペーパーテストだと思うことで、大学受験の成功体験をなぞろうとしているように見えます。
しかし、そうした努力は多くの場合、無駄に終わってしまいます。
コツによる点数UPの幅は限られていますし、模範回答を覚えたとしても試験本番での再現性がありません。管理職としての考え方や思考プロセスを抜きにしてどうやって攻略できるのでしょうか?
インバスケットを攻略するために、最初に申し上げておきたいのは、ここです。
まずは、ペーパーテストという認識を捨てて下さい。ここがスタートです。
インバスケットは、管理職のデスクワークのシミュレーション
インバスケットでシミュレートされるのは、管理職のデスクワークです。
管理職はインバスケット(未決済箱)に入った様々な書類に目を通し何かしらの判断をすることになります。
管理職は書類に目を通して、OKならハンコをポンと押し、駄目なら駄目と処理するという仕事の流れです。
そんな仕組みですので、管理職の机には書類を整理するためのインバスケット(未決箱)とアウトバスケット(既決箱)が用意されています。
未処理の書類についてはインバスケット(未決箱)に溜められ、アウトバスケット(既決箱)には処理された書類が溜っていくのです。
そんな管理職の日常をシュミレートし、エクササイズとしたのがインバスケット演習です。
そして、このような仕事の流れはITによる電子化が進んだ現代でも本質的には変わらないというのが前提となります。
インバスケット演習では、受講者のインバスケットに沢山の書類が投入されます。それを制限時間内に処理して、アウトバスケットに入れないといけません。
このような前提を頭に入れるのと入れないのとではインバスケット攻略の取り組みに大きな差が出てきます。
はじめての方にとっては、インバスケット演習はどうみても一風変わったペーパーテストにしか見えないのが一般的です。
そしてそのまま管理職になりきれずに、ひたすら頭を悩ませることになります。
そうならないためにもまずは、上記前提から導き出される行動を頭において下さい。
- あなたが管理職として、アウトバスケットに殆ど書類を入れられず、インバスケットに入れたままにしたら組織はどうなるでしょうか?部下はどうなりますか?
- 仮に部下に対しての指示をするのであれば、「やっておいて!」とたった一行の指示文で部下が行動できるでしょうか?
- 簡単に手をつけやすい案件を優先的に処理したら、組織はその後どうなるでしょうか?
- 簡緊急度・重要度で優先順位を付けるのはいいのですが、何故それが重要なのか部下に説明できますか?
他にもポイントはありますが、インバスケット演習では、このような基本的なことが分かっていないと攻略にはなりません。
繰り返しになりますが、インバスケットはただのペーパーテストではなく、答えは無いのです。
答えを導き出す、考え方や思考プロセスを身につけることが必要なのです。
インバスケット演習における制限時間と案件数の関係
インバスケット演習は人材アセスメントのなかでも「思考面」をみるものです。
繰り返しになりますが、受験者をある架空の限定されたシュチュエーションに置き、主に時間というプレッシャーを与えるなかで、表出した「行動」を観察するのが人材アセスメントです。
インバスケットにおけるプレッシャーとは制限時間と与件の分量が該当します。
制限時間が多めに設定されれば、「案件」は多く設定されます。逆に、「案件」が少なければ、制限時間も少なく設定されます。
一般的にインバスケットは2時間程度で、20案件を処理することになりますが、1時間で10案件ということもあり得ますし、3時間で30案件ということもあり得ます。
このような関係性をまず頭に入れておいて下さい。
つまり、インバスケット攻略のためには、時間管理と行動管理が欠かせないということです。
これらは、日頃から業務中に心がけて取り組むことにより比較的容易に改善することが可能です。
当ページでは日頃から心がけて取り組むためのポイントについて、業績の良い企業の社員の振る舞いから抽出した※コンピテンシーをベースに説明します。
※好業績をあげる人に共通の行動特性
以下は、時間管理と行動管理に関連するコンピテンシーをチェックリスト化したものです。
ご自身の日頃の行動と照らし合わせてチェックしてみて下さい。
項目 | 行動特性 | |
---|---|---|
行動の整理 | □ |
成果を想定して、そのためにはどのような行動をとるべきかを、リストアップしているか |
□ |
1日にやるべき行動をリスト化し、緊急度と重要度から優先順位を付けているか |
|
□ | 1日の業務終了時に、完了した行動、継続中の行動、未着手の行動、中止の行動等、1日の行動の遂行状況を整理しているか | |
□ |
行動の種別を判断して区分(色分け等)を行い、全体の偏りをなくしているか |
|
行動の計画と時間帯の設定
|
□ |
前夜の夜又は当日の朝に、1日の行動計画を立てているか |
□ | 各行動に要する時間の見積もりを行い、重要事項はゴールデンタイム(最良時間)に当てているか | |
□ |
いつまでに行動を完了させるのか、締切期限を設定しているか |
|
□ |
重要度は高いが緊急度が低い長期的な目標は、長期的スケジュール票で行動時間を確保しているか |
|
行動の実行
|
□ |
重要な行動の実行は、電話や接客などの外的中断要因を遮断できる時間帯にしているか |
□ | 同類の仕事は、同時にまとめて処理をしているか | |
□ | 優先順位の低い仕事は、時間を決めてまとめて一気に処理しているか | |
その他の行動特性
|
□ | さまざまな理由をつけて先延ばしせずに、直ぐに仕事にとりかかっているか |
□ | ムダ時間とその要因を見つけるために、行動の実態記録と分析をしているか | |
□ |
すきま時間や移動時間に、行動の整理や情報収集をしているか |
引用:「(財)日本生産性本部 生産性労働情報センター コンピテンシー・ディクショナリー」を元に筆者編集
上記のチェックリストを活用して、是非ご自身の日常を振り返ってみてください。
紹介しているコンピテンシーの内容を意識して日頃から業務に取り組むめば、時間管理と行動管理のスキルはかなり向上します。
遠回りのように思われるかもしれませんが、、効果的なインバスケット攻略法となります。
慣れることが必要
インバスケット攻略に最も重要なこと、それは何でしょうか。
重要なことは沢山ありますが、最も重要なことのうちの一つは”慣れる”ことだと言えます。
その点は、普通のペーパーテストと共通するかもしれません。ただし、インバスケットの場合はそれが顕著であると言えます。
上記のように、インバスケットをはじめとした人材アセスメントの演習はその基礎に時間的なプレッシャーをおいているからです(対人の演習では、より対人的なプレッシャーも加わります)。
プレッシャーをかけられると、人間は取りつくろう余裕を無くし、素の姿をあらわにするという考えなのです(人によっては、ズタボロになってしまいます)。
人材アセスメントが、軍隊の将校選抜試験から生まれたというのが頷ける部分ですね。
さて、インバスケットに話を戻すと、全体的にとにかく文字数が多いことが分かります。その割に時間は短く設定されています。インバスケットも明らかに時間的なプレッシャーをかけるように設計されているのです。
初めて取り組んだ人は、そのボリュームに圧倒され、それを処理する時間の少なさに絶望を覚えると思われます。そして、そのまま時間切れを迎えてしまうこともあるでしょう。
しかし、これが2回目となると、そんなものだろうと分かっているだけに精神的にも余裕をもって取り組むことができます。
また、時間配分や優先順位付けの重要性が分かっているだけに、大ポカをする可能性も減るわけです。
実際に、2回めのチャレンジで合格する方は多いのです。
従って、インバスケットは、何度も取り組みできるだけ慣れておくのが良いと言えます。
まず、慣れること。これが、インバスケット攻略には必要になります。
インバスケットのコツ
ここからは、より具体的にインバスケットを攻略するために、様々なコツを紹介していきたいと思います。
まず、インバスケット演習では、限られた時間というプレッシャーを与えられる訳ですから、時間をどう使うかという時間管理の能力が必要であるというのは上記の通りです。
これを具体的なコツとして紹介すると、
- 案件全体を俯瞰して読み込む。
- 優先順位をつけて案件を処理する。
ということになります。
また、案件を処理する際の、白黒つける際の判断基準も見られます。ただ判断すればいいというのではなく、前提の部分があるのかというとこまで含めて評価されているということは頭に入れておいてください。
ただ単に、部下や関係部署に丸投げしてしまうようでは管理職は務まりません。
判断の前提となる自身の方針を明確にし、自分で判断し、判断の先延ばししない、ということがコツとなります。
加えて、部下や関係者への指示の際に気を使うか、根回しはしているか、コンテンジェンシープランを準備しているか、はたまた、冗談のようですが筆記の際の筆圧まで観られています。
つまり、指示の内容が1行や2行であったりしては駄目だということです。これは、巷で販売されている模範解答をそのままコピペする人にありがちなことですので、気をつけて下さい。
具体的な指示出しがインバスケット攻略には求められます。
ちなみに、筆圧が強い、弱いからといって評価にプラスマイナスは付きにくいですが、受講者の方のプロフィール作成の参考情報にはなります。
考えているだけでなく書き出す
インバスケット演習において、アセッサーと呼ばれる評価者は、受験者が紙に書いたもの(=行動)を観察し、受験者の思考面を評価します。
つまり、考えているだけではダメで、書かないと評価されないのです。
書き出した量があまりに少ないと頭がよろしくないと判断されかねません。
インバスケットひいては人材アセスメントでは、あなたの頭の中はブラックボックスであり観ることが出来ないというのが前提なのです。
ですから、基本的にはアウトプットでしか評価しません。
ですから、できるだけ書いて下さい。
自由記述のインバスケットの場合、メモを残すこともできますから、指示に至らないようなことでもメモしておくことがコツとなります。
与えられた役割になりきる
何の試験でもそうですが、基本的にぶっつけ本番は危険です。本番前にインバスケット演習に取り組んでみることがよいでしょう。
これまで人材アセスメントはシミュレーションであると記述してきましたが、試験ですから”ひっかけ”、つまり罠はあります。
インバスケット演習においてみなさんが置かれる状況はかなり特殊ですので、注意が必要です。
ある種の箱庭の状態に皆さんを置くために、電話が使えない、直ぐに出張に出なくてはいけない、出張中は連絡がとれない、等々の状況設定があるのです。
これをあり得ないと一蹴する人は残念ですが、試験には合格できません。
そういうものだと思って、与えられた役割になりきって取り組むのがコツです。
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